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【SS】齊藤想『耐久テスト』 [自作ショートショート]

2016年大阪ショートショートで最終選考まで残った作品です。
テーマは「復活」でした。

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『耐久テスト』 齊藤想

 新型二足歩行型アンドロイドの試作機が完成した。
 基本的なテストは実験室で行われてクリアーしたが、まだ実地試験が残っている。この新型機を市販するためには実際に運用し、人類に危害を与えないことを実証しなくてはならない。
 この試験のために、新型機はまだ文明の発達していない殖民惑星に派遣された。知的に劣っている原住民たちの攻撃にさらされても、相手に危害を加えることなく、自らを守り続ければ合格となる。
 
 最初の実験場として選ばれたのは、高温多湿の地域だった。精密機械にとって、高温と湿度は最大の敵だ。この環境に耐えられてこそ、耐久テストの意味がある。
 新型機は川べりで眼を覚ますと、この地域を治める王の元に向かった。身なりや顔つきを整えることで人知れず王子と入れ替わると、安楽な生活をむさぼるようになった。原住民との知力の差が大きいため、このくらの芸当はお茶の子さいさいのようだった。
 城に居座られてはテストにならない。研究室はアンドロイドに指令を与えて強制的に放浪の旅に出すことにした。大雨の中を行く当てもなく歩かせ、ときには大河の飛び込ませた。それでも故障することはなかった。
 彼は厳しい環境に耐え、旅の途中で原住民たちの心を掴むことに成功し、多くの人に慕われるようになった。原住民の精神向上にも貢献した。テストとしては上々の成績だ。
 実証データは充分に揃ったので、彼は木の下で眠らせることにした。原住民たちは死んだものと思って、墓を立てた。
 時代が下ると、彼を祭る神殿のいくつかに「遺骨」と称する物体が埋められるようになった。ロボットである彼が骨を持つことはないので彼らが崇め奉る遺物が偽物であることは論を待たないが、原住民とは不思議な生物である。

 二号機は砂漠へと向かわせた。
 高温多湿の環境をクリアーすることができたので、今度は乾燥した地域でテストを行うことにした。
 二号機も一般家庭に紛れ込み、一号機ほどではないがほどほどの生活を始めたので、これも旅に出させることにした。
 彼は砂漠と荒野を歩き続けた。乾燥と紫外線に充分に耐えた。彼は一号機を同じように旅の途中で原住民の心を掴むことに成功し、多くのひとに慕われるようになった。
 一号機との違いは、支配者層に睨まれたことだった。
 彼は捕らわれ、市内を引きずり回され、槍と釘を何本も突き立てられた。最新鋭のロボットなので、この程度のことで破壊されることはない。しかし、さすがに死んだことにしないとまずいので、一旦は機能を停止させた。原住民たちは死んだものと思って墓を立てた。
 夜中にこっそりと回収しようと再起動させたところ、原住民に見つかって大事件になりかけた。正体がばれることも覚悟したが、なぜか「復活した」と有難がられ、彼をたたえる聖典に奇跡として記載されることとなった。もちろん二号機が事前に「私は復活する」と宣言したことはないが、伝説に伝説が重ねられる過程で復活を予言し、その通りに復活したこととなった。原住民たちの想像力には恐れ入るしかない。
 いずれにしても原住民たちの知力の低さに助けられた部分はあったものの、実験の成果としては上々だった。
 こうして実地試験をクリアーした新型アンドロイドは発売されることになった。いまでは各家庭に普及しているごくありふれた商品だ。

 なお、試作機はあまりにも原住民たちに愛されたがゆえに、一号機は”仏陀”、二号機は”キリスト”と呼ばれ、いまだに彼らの歴史にその名を留めている。

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